ショックだった一言

ケア壱さん、昨日ちょっとショックなことがあって……。

どうしたんだい、ユウキくん?

あるご利用者さんが、面会に来た娘さんのことを「知らない人」と言ってしまって。 娘さんは明るく振る舞ってたけど、目がうるっとしてて……見てるこっちも辛くて。

ああ、それはつらかったねぇ。ご本人にとっては“嘘”でも“意地悪”でもなく、本当にそう感じてるんだろうな。
なぜ家族を“他人”と感じるのか?

でも、どうして家族の顔を忘れちゃうんでしょう? 子どものころから一緒にいたはずなのに……。

うん。認知症の進行とともに、記憶の順番が“巻き戻って”いくことがあるんだ。 つまり、今の記憶より、昔の記憶のほうが鮮明に残る。

ということは……?

例えば80代の人が、自分が40代くらいだと感じていたら、 当時まだ小さかった子どもが目の前に「中年の大人」として現れたら、そりゃ「誰?」ってなるよね。

なるほど……そうか。時間軸がズレてるんですね。

そうそう。そして、記憶だけでなく「関係性」も薄れていくことがある。 だから、かつては深い絆があった家族でも、今の本人にとっては“知らない人”になってしまうこともあるんだ。
本人も、家族も、傷ついている

ご家族も本当はすごく悲しいですよね……。

うだねぇ。でも、本人も実は不安なんだよ。 「この人、誰?」と思ってる自分に戸惑ってたり、「知らない人に優しくされてる」ことに気まずさを感じてたりね。

そっか……。どちらも、傷ついてるんですね。

だからこそ、介護職のぼくたちが、その間に立つ意味があるんだよ。

“橋渡し”ってことですか?

うん。たとえば、
- 「お嬢さんですよ」と無理に訂正するのではなく、
- 「この方、あなたをとっても大事に思っておられますよ」と伝える。
本人の安心と、家族の想い、その両方に寄り添うことが大切なんだ。
まとめ:事実より、「安心」を届けるケアへ

“正しさ”より、“安心”を届けるってことですね。

その通り! ケアって、情報のやりとりじゃなくて、気持ちのやりとりだからね。

これからは、「知らない人って言っちゃダメですよ」じゃなくて、「大丈夫ですよ、ここにいますから」って寄り添ってみます。

うんうん、それでこそユウキくん! 悲しいすれ違いの中にも、あたたかい関わりはつくれるよ。
◆ ポイントまとめ
- 認知症による記憶の“巻き戻り”で、家族が“他人”に見えることがある
- ご本人にも不安や戸惑いがある
- 家族も傷つきやすいため、介護職が安心の“橋渡し”に
- 「正しさ」より「安心」を届ける言葉かけを
あなたのケアが、ご本人とご家族のつながりをやさしく支えますように。
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