リーダーに「返報性の原理」は必要か?
結論から言います。
返報性の原理(または返報性の法則)は、介護現場のリーダーにとって“必須のスキル”です。
私自身、リーダーになりたての頃は、いわゆる“嫌な上司”そのものでした。
経験がないスタッフに対して、介護歴7年の自分の「常識」を押しつけ、苛立ち、無意識に険しい表情で職場に立っていたのです。ある日気づいたのは、私が出勤するとスタッフの表情がこわばるという事実でした。
ところが、認知症の研修で「相手は自分の写し鏡」と教わり、利用者に笑顔で接するように心がけると、笑顔が返ってくるようになった経験を思い出したのです。
「これってスタッフにも使えるのでは?」
その気づきが、私のリーダーとしての“第二章”の始まりでした。
返報性の原理とは?
返報性の原理とは、他者から受けた好意に対して「お返ししたい」と感じる人間の心理のこと。
- 笑顔で話しかけられた → こちらも笑顔で返す
- 親切にされた → 親切で返したくなる
逆に、怒鳴られたり、威圧されたら…どうなるかは説明不要ですよね。ガルルゥ(笑)
スタッフにも返報性の原理は必要?
もちろん必要です。というより、信頼関係のある職場には、自然と返報性が働いています。
たとえば、
- 苦手な仕事を率先して行うリーダー
- 日頃から「ありがとう」と感謝を伝えるリーダー
こんなリーダーには「自分も頑張ろう」と思えるのが人情。
恩返しをしたくなる心理=返報性の原理です。
私はこの原理に気づいてから、どんなに自分も苦手な仕事でも、スタッフの手本として率先して動くようにしました。すると自然と、スタッフが私の苦手なことを引き受けてくれるようになっていったのです。
返報性が働かない“残念なケース”
残念ながら、返報性の原理がうまく働かないケースもあります。
それは「打算」や「下心」が見えたときです。
- 「ありがとう」の裏に見返りを求める態度
- 表面上の行動だけで、本音が見えない
スタッフは敏感です。信頼できない人の“親切”は受け取られないのです。
だからこそ、リーダーは返報性を狙って行動するのではなく、“自己成長のため”に動くことが大切。
信頼される人間性があってこそ、自然と返報性が機能します。
信頼関係が返報性を育てる
最後に、返報性の原理で最も重要なのは「信頼関係」です。
信頼があれば、もはや返報性を意識せずとも、自然とお互いに助け合う関係が生まれます。
- スタッフに信頼されるリーダーは、指示が通りやすい
- リーダーを信頼しているスタッフは、多少のミスでも素直に報告してくれる
信頼こそが、最高の職場コミュニケーションの土台なのです。
まとめ:返報性は“知識”ではなく“日常の行動”で育つ
返報性の原理は、「信頼」と「誠実な行動」があってこそ機能します。
- 嫌なことも率先して行う
- 感謝を忘れず伝える
- 打算ではなく、人としての姿勢で接する
これらの行動を重ねていけば、スタッフは自然とあなたに協力的になります。
それが返報性の原理の本当の力です。
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